どうでもいいこと

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【崩スタ考察】当事者の言動からその心理を洞察し、飲月の乱とその周辺のストーリーを編んでみる

前回、飲月の乱の詳細には触れず目的は恐らく羅浮を守るため、仲間達側につくためのものだろうかと書いた。

それで終わりにしようかと思ったが、やっぱりもうちょっとそこに至るまでに考えたことをまとめておこうと思い直した。

なので、今回はその詳細に少しでも近づいてみたいと思う。

 

詳細に近づいてみたい……そう願っているが、実は現状では不可能である。

 

なにせ推測にするのに必要な情報が断片的すぎかつ、偏りすぎている。

断片的でも複数視点での情報が存在し、なおかつ総量が多ければ真実に近づける可能性は増すが、現状、真理に近づくために有益な情報は景元発と刃発のものしか存在しない。

モブが語る話や書物など、公になっているものは、こういう場合全く当てにならない。

なにせ、歴史というものは施政者によって都合よく改竄されるものである。そこにはフィクションもノンフィクションも関係ない。実際、ゲーム中でもすでにベロブルグでそれが行われた。

真実は当事者にしかない。

 

しかし、その真理に近づくために必要な情報提供者が今の時点ではたった2人。

しかも、ひとりは策謀に長けた人間、もうひとりは設定上正気でない人間である。

心もとないにもほどがある。

 

そのため、これは考察でなく飛躍したただの想像である。

自分は心理面からの分析と事実の統合が性に合うので、彼らの言動をもとに想像を膨らませ、限りなく整合性のとれるストーリーを編んでみたい。

 

ちなみに目次からすでに盛大にネタバレしている。

雲上の五騎士周りと飲月の乱についていちから自分で深めたい、とお考えの方はすぐに引き返してもらった方がいい。

 

 

 

 

「飲月の乱」の大筋に影響の大きい事柄を整理する

 

有り得そうな筋書きをあぶり出すために、まずは「飲月の乱」のストーリーの分岐点になりうる、重要ポイントを整理してみよう。

 

 

飲月の乱で不死となったのは誰か?

そもそも誰かが不死になったかのかすら怪しい。

現在確認できる情報からは確証がない。

ただ、刃が豊穣にまつわる何かによって不死と自己治癒力を有しているのは彼の天賦名、「倏忽の恩賜」から間違いなさそうである。

そして、飲月君が仙舟に不老をもたらした建木の封印に関わっている以上、そこに関連していると考えるのは自然かと思う。

なので、ここでは飲月の乱に関連して刃が不死となったと仮定して考える。

刃以外だと話が相当ややこしくなる。

現状でこれが刃以外となると、話の幅が広すぎて最早収拾がつかない。

 

 

景元が将軍となったのはいつか

飲月の乱の前、雲上の五騎士が活躍していた時代に景元が将軍だったとは考え難い。

普通「剣首」と「将軍」は同列に扱われないかと思う。

飲月の乱の後であったことは間違いないだろうが、最中なのか、直後なのか、もう少し後なのかによって話が変わってくる部分がある。

ストーリーを編む過程で無理のない時期を推測してみたい。

 

 

「人は5人代価は3つ……」これは誰の言葉か?

この重要そうな言葉の初出は刃から景元に向けてである。

刃のボイスによれば、「この言葉は傷口の一つ一つに刻み込まれている」とのこと。

だとすれば、刃は言い出しっぺではなく、誰かにかけられた言葉であると考えるのが自然だ。

状況からすると、発言の大元は鏡流か景元であると思われる。しかし、どちらかが言ったかによって、代価の中身が変わってくる。

鏡流が言ったのであれば、3つの代価は丹楓・刃・狐族の女性

であるし、

景元が言ったのであれば、3つの代価は丹楓・刃・鏡流

ということになろう。

しかも、後者の場合、この言葉は鏡流が魔陰に落ちた後で出てきたということになるので、飲月の乱の後相当の期間景元と刃はコミュニケーションを取れる状態にあったことになる。

……いや、景元もその言葉に縛られている節があるので、言い出しっぺは鏡流が妥当かと思う。

 

 

狐族の女性が関わるか

これが深く関わるとなると、最早伏線の全くないミステリーを推理するようなことになる。さすがにそんな無理ゲーであるわけがないだろう。そう思いたい。

あくまで間接的な関与と仮定して進める。

 

 

鏡流の魔陰落ちは想定内か想定外か

想定内……意図的な魔陰落ちだとすれば、話はかなり壮大になり、収集がつかない。そのうえ、景元がピエロに成り下がる。想定外であると仮定して進める。

 

以上の仮定を前提として、矛盾のないストーリーが編めるかやってみよう。

 

 

「飲月の乱」の有り得そうな筋書き その1

内乱か敵襲か何らかの理由により、羅浮雲騎軍が劣勢となる

戦の最中に刃が致命傷を負うなどする
もしくは、すでに老域にあり隠居して死に瀕しているなどする

「刃がいれば……」や「刃を死なせるのが惜しい」のような意見が出てくる。雲上の五騎士の四人もちょっと考えないでもないが、それは巡狩の恩恵にあずかる羅浮ではとても不可能。

議論がまとまらないまま丹楓が自分が責任を引き受ける、とか何とかいって皆の賛同を得ないまま行動を起こす

建木の封印を解き、刃が不死身になる
飲月は他者の目を刃から逸らすために水と雷を操って大暴れ
その過程で、残念ながら同胞を傷つけたりもする

捕まった飲月は幽囚獄に幽閉。「自分が不死を求めてやった」の一点ばり

不死身になった刃に鏡流がゾンビ稽古を積ませ、脅威を排する

飲月の処遇について議論される。
※この時すでに景元が将軍になっているとしたら、手助けができるが、そうではなさそう

飲月の沙汰が決まる。

転生を待ち、島流しになっても生きていけるよう刃が相手になって槍を教える

脅威が去り、丹楓もいなくなり、刃は自分の存在意義を見失う。

魔陰の兆候が見られるなどする。

景元が刃を舟外に出すための根回しなどする。
※この頃には少なくとも将軍になっていないとおかしい

もしくは、ふらりと居なくなる。

丹楓はいなくなり、刃も去り、狐族の女性もいなくなった鏡流が心労がたたって魔陰を発症。泣く泣く景元が討つ。

 

 

どうだろう、少し怪しい……というか、強引なところがないわけでないが、一応整合性は担保されているのではないだろうか。

 

「人は5人代価は3つ…」の言葉が鏡流のものなら、ゾンビアタック稽古の際に刃にかけられたと考えるのが自然だ。また、景元も同様に鏡流から言われていた可能性もある。この場合、狐族の女性はすでに(いろんな意味で)故人だろう。後述する。

 

この言葉がもし景元発のものであれば、鏡流が魔陰に落ちたあとのことであるから、景元と刃の2人の間だけで交わされたものになる。

 

この筋書きだと一応整合性はとれている。

取れてはいるが、少々疑問が生じるのは否めない。

 

 

 

「飲月の乱」の有り得そうな筋書き その2

仙舟同盟内に「薬王秘伝」に組する、同盟の権力者を擁する組織が存在する。

不老不死を望む持明族はその組織とズブズブである

身内(龍師の一部とそのとりまき)にそのような輩がいることを知り、怒った丹楓が暴れる(=飲月の乱)わが身諸共滅ぼしてやる的な。

止めるつもりで現場に行ったか、居合わせた刃がそのどさくさで不老不死になる。

怪しげな反乱組織を調査中だった景元、鏡流は寝耳に水。

捕らえられた丹楓に事情を聞くが口を割らない。「持明族は不死を望んでいる」とかなんとかいう。持明族は龍尊が勝手にやった、とかいう。

不死となった刃からふたりは事情を聞く。

飲月の処遇について議論される。

飲月の沙汰が決まる。

転生を待ち、島流しになっても生きていけるよう刃が相手になって戦い方を教える

不死身になった刃に鏡流がゾンビ稽古を積ませる。

お前が側にいながら、何やっていたんだ的な。

ついでに、せっかく不死になったのだから戦力として有効活用しよう。

丹楓の仇討ちだ……?

 

こちらの筋書きはけっこう厳しい。

鏡流の行動があまりにも突飛すぎて、鏡流が丹楓に特別な強い感情があって、なおかつ刃が鏡流に特別な感情があったという条件が必要になる。

それにしても私情が入りすぎて、「人は5人代価は3つ」の件が死んでいるうえ、景元が空気すぎる。

 

筋書き1の方がまだ無理がない。

無理はないが、若干疑問が残る。

以下に疑問点を整理していく。

 

 

 

「一意孤行の末、彼とともに愛する者を化け物にした」の件は?

刃が実装される前から、彼のことを表していると目されていた遺物、流雲無痕の過客の逸話の一説である。これがかなり曲者なのだ。「愛する者」が鏡流のことであれば上で挙げた筋書きでしっくりくるが、刃の彼女への態度が「愛する、も、の……?」と思わせざるをえない。

 

刃は鏡流について以下のように語っている。

剣を振るう時、体に幻痛が走る──どこが致命の一撃となり、どこが死に至らず苦痛を与えるだけなのか──すべて、あの女の「おかげ」だ!

 

また、丹恒に致命傷を負わせて覚醒させた後、彦卿と対峙した際に彦卿が使った技を見て……

 

その剣…見覚えがあるな
あの女に教わったか
ならば、貴様には死んでもらおう!

 

このようにも言っているのである。

とても、愛する者に対する言動に見えない。少なくとも普通の感性では。

 

ただ、刃ちゃんは内心とは裏腹に盛大に憎まれ口をきく傾向が見られるので、スケールのおかしいツンデレのツンと解釈できなくもない。

 

刃の使っている支離剣は仙舟の最高の剣士だけが神髄を引き出せるらしいが、もともと鏡流が使っていたもののようだ。

鏡流が彦卿に「自分に勝てないのなら刃にも当然勝てない」という主旨のことを言っていたので、苛烈な稽古の結果、刃は鏡流を上回り、それを鏡流が認めたのだろう。もしかしたら彼女自身の手によって、正式に支離剣を譲られたのかもしれない。

そして、刃はその剣を静かに目を閉じて抱えるモーションがある。大事そうに抱えているように見えなくもない。

しかも、ふたりは同じように剣を構えるのだ。心から恨みがましく思っていたら、そんなことするだろうか。

 

刃の憎まれ口としては、間接的に景元を認めているような主旨のものも確認できている。

彦卿が登場した際に、刃は以下のように言っている。

 

景元についている小僧か…

ふん、奴は時機の見極め方を教えなかったようだな……

 

これは、「景元は時機の見極め方を知っているくせに」ということで、婉曲的に彼を認めている発言である。

このように憎まれ口をたたきやすい傾向に、魔陰でネガティブが凝縮された状態であることも加味すると、行き過ぎた親愛の表現と思えなくもない。

 

ちなみに、別の方面からも「愛する者」はやはり鏡流のことでは? と思わせるものがある。

 

彼女からは剣技を教わっていたが、最後まで親しいとは言えない間柄だった…

はあ、しかし、果てしない夜の中で、空に浮かぶ月ほど身近な存在もないだろう?
(景元のボイス 鏡流について)

 

景元は鏡流のことを月に例えている。

 

腕甲の持ち主はかつて自分と無言で酒を飲み交わし、月を眺めた。
(過客の游龍腕甲の由来より)

 

丹楓と刃はふたりで無言で月を眺め、酒を飲み交わしていたようである。

本当の月かもしれないし、鏡流のことかもしれない。

日本語にも「月がきれいですね」という、男性から女性に使う古い口説き文句があるが、月は女性の比喩になることも多い。

ムービーでは鏡流が月を背景に佇んでいたリ、満月を背景に美しく舞う姿が見られる。

どうも師匠は月と縁が深そうに思えてならない。そうでなければ、わざわざこんなに分りやすく匂わせるのだからミスリードを誘っているのだろう。

 

そういえば、龍尊の尊号が「飲月」なんだよな……。

意味深である。

月を飲みこんでしまったのか……?

鏡流が丹楓に強い特別な感情があったのだとすれば、筋書き2に類するストーリーも有り得なくないかもしれない。

 

 

 

そこに愛はあるんかい?

 

前段最終部に少し関連するが、一部の界隈ではこれが大変な問題になっているようである。

当然である。

推しが別キャラと恋仲であるなど受け入れがたい。公式と解釈違いである。

 

余談であるが……

「符玄様がもし景元のことを好きならば、景元と並べてパーティーを組んでやるのが本当の愛だ!」というような主旨のことを符玄推しの方がおしゃっているのをネットで見て、いたく感銘を受けた。同時に腹を抱えて笑った。

それこそまさに愛である。

自分はとてもじゃないが、そのような崇高な感情にまで昇華できそうにないが……。

 

話しを戻そう。

今の不確かで匂わせすぎの状態では、鏡流推しも刃押しも丹楓推しも皆一様に苦しい。

推しを手中に収めるには大枚はたいてガチャを引く必要があるというのに、とても心穏やかでいられるわけがない。安心して凸を進めていいか確信を得たいのは当然である。

 

人の言動から心理洞察を趣味とする自分は、「刃から鏡流に向けて」と「鏡流から刃に向けて」は恋愛感情はないように見える。今のところは。

丹楓-鏡流間については全く情報がないので考えようがない。

同様に、丹楓-狐族の女性間、刃-狐族の女性間も考えようがない。

……考えようはないのだが、狐族の女性が刃に特別な感情があった可能性は、あるような気がしている。

いろんなところで割りと狐族と短命種の友情や恋愛問題がクローズアップされている。

もしかすると、刃-狐族の女性間の伏線なのかも、と思わせる節はある。

 

話しを戻す。

「過客の游龍腕甲」の由来について、英語か中国語の文を見てみたいところであるが、「愛する者」のニュアンスは恋慕の情というより、友愛や敬愛の方が近いのではないだろうか。

もし恋愛感情に類するものがあったとしても、憧れに毛が生えた程度の淡いものだと思う。

ただ、その種のものがあった場合は交錯していた可能性が高いとも思う。

刃は鏡流は丹楓の方を向いていたと思っていそうだし、丹楓は丹楓で鏡流は刃を見ていると思っていたような気がする。

そうであれば、それが決定打でなかったとは思うが、少なくとも丹楓が刃を不死にしてしまう動機が強化されるし、その結果丹楓が失われ、鏡流の魔陰落ちの大きな原因になったと刃が思ってもおかしくないように思う。

あくまでも「一意孤行の末、彼とともに愛する者を化け物にした」が「鏡流の魔陰落ちを早めてしまった」という意味ならば、であるが。

 

 

飲月よ…俺たちの業報はいつ訪れる?俺たちが作った借りは、どう返せばいい!

これは本当に分からん。

情報が少なすぎて解釈に困る。

借り……? 誰に対する借りだ。

 

今見えている事実だけ見れば、彼ら2人に一番貸しを作っているのは景元のように見えるが。

鏡流が魔陰落ちしたことだろうか。だとすれば、「借り」という表現は相応しくないように思う。

これまでの脈絡を無視したぶっとび想像なら、故人と思われる狐族の女性は2人を庇って死んだ可能性があるかもしれない。

 

御空のストーリーが婉曲的に示唆している可能性がないわけではないと思う。

 

毎回出征する前、私は戦友に約束していたわ。
「あなたはしっかり武器を握りしめて、私があなたを仙舟に連れ帰る」
でも、私は約束を破ってしまった。
あの戦いの後、私だけが傷ついた身体を引きずって天舶司に戻ってきた。

 

御空は景元がかつて雲上の五騎士であった狐族の女性の面影を見て、見出した人材かと思われる。

戦友を死なせ、飛行士であった御空だけが戻ってきたのなら、かつては戦友を生かすために死んだ飛行士もいたかもしれない。

 

もしくは、生きてはいるけれどもすでに過去の存在とは異なるものになっているとかも有り得るかと。

景元以外の3人、鏡流、刃、丹恒(楓)がそうであるように。

この種の逸話が飲月の乱の前段階にあれば、これ以上仲間を失いたくない丹楓が刃不死化への動機が強まるだろうし、もしそれが刃のせいだったりしたら、鏡流が刃に凄惨な稽古をつけた動機の説明にもなる。

 

 

景元は蚊帳の外だったのか?

 

景元以外の関係者が意図的に関与させなかった可能性はあると思われる。

 

そもそも景元は雲上の五騎士のなかでは年少者である可能性が高い。

ムービーでも鏡流が成人の姿であるのに、景元は少年だ。

刃のキャラストでも丹楓のことは「男子」と形容されているが、景元と思われる人物のことは「少年」表記である。

 

また、景元は「武力で名を馳せたわけではない」と明記されている。

早くから景元は武人でなく政(まつりごと)によって羅浮を守れる次世代の逸材と目され、何なら鏡流や刃、丹楓から様々な形で守られていたのではないだろうか。現在景元が彦卿や符玄にそうしているように。

 

もし飲月の乱の具体的目的が「刃を不死にすること」であったり、それに付随して羅浮内や同盟の目を欺くことだったとすれば、景元ならばもっと穏便に目的を果たす手を考えられそうである。巡狩と蜜月の羅浮の思想からいけばとんでもないことではあるが、景元は大局を見る人間なので、その辺りもものともしないだろう。

 

実際、現在の景元は符玄にこう言っている。

「危機が迫った時、規則が有用であれば従うが、無用であれば捨てざるを得ない」と。

 

刃は景元が何も言わず、何もしなかったと、恐らく件に関連して言っているが、景元に何もさせなかったのは丹楓なのでは? という疑念を自分は持っている。

未来ある景元に万が一にも類が及ばないようにするために、または、面倒事を片付けてやるために、丹楓はあえて派手な形……飲月の乱というものを演出したのではないだろうかと。

 

そのような事情でもなければ、景元の丹楓に対する感情が濃すぎてちょっと説明がつかない。

散在する情報からいくと刃と丹楓の方が因縁が深そうなのに、温和で冷静で、掴みどころのない景元が、丹楓に対してはあまりにも未練がましくて自分を出しすぎなのである。

 

ついでに言えば、雲上の五騎士に対して景元が感傷的すぎるのもひっかかる。

 

鏡流と刃、そればかりか丹楓と自分の要素すらも合わせ持つ彦卿をわざわざ見つけ、さまざまな異論を排除してまで軍に入れ、あげく、自分の側において育てている。

 

「不良少女」の御空を天船司に入れたのも、その姿に雲上の五騎士であった狐族の少女の面影を見たからでないだろうか。

 

景元は飲月の乱とその周辺で起きた事柄について、無力であった若い自分を悔いており、それを払拭すべくこれまでと今を生きているようにも見える。

 

 

その他の細々とした要素について

腕甲について

刃と丹恒が片方ずつ付けていると思われる、龍脈一族の巨匠が作り出したとかいう逸品。

違いに感応するらしく、もう一方の位置が分かるらしい。

なぜ刃と丹恒が分けて持つに至ったのか。

より現実的な理由であれば、中途半端な脱鱗によって化龍の力が完全に失われなかった丹恒の位置を見失わないようにするためかもしれない。建木になにかあったときのために。刃はずっと丹恒の監視役兼保護役を担っていた可能性があるのでは?

ひとり何も覚えていない丹恒は命を狙われていると思っていたかもしれないが。

 

丹恒の覚醒を経て、3人が再会した際に刃が景元に「俺のやるべきことは、もう終わった」と言っている。それに対して景元は「ああ、そうだろうとも」と応えている。

このやりとりだと、景元はカフカと取引をして、刃を利用して丹恒の覚醒を促したという風には読めない。

「そうだろうとも」は、言わずとも分かっている、という意味を含んでいるのだから。

 

また、より感傷的な理由なら、丹楓自身が転生前に刃に渡したかもしれない。

恨むならいつでも殺しにこい、生まれ変わっても待っている的な捨て台詞とともに──などと思ったが、丹楓は腕甲なんて付けていないのである。

誰がいつ用意したのか不明である。

島流しに合う元龍尊が不憫で、舟を出る際に龍師の誰かが用意したのだろうか。それとも武具に精通していそうな刃がその存在を知っていたのだろうか。

 

 

狐族の女性について

先に触れたが、仲間を庇って戦死したか、凄惨な戦場が耐え難くなり正気を失った可能性があると思う。続く戦乱のときを景元が「果てしない夜」と例えているので、よほどのものだろう。

特に狐族は享楽的な人生観らしいので、堪えそうである。

狐族の寿命は300年ほどであるが、魔陰にならないわけではなく、なりにくいだけらしい。

「愛する者を化け物にした」の件が、狐族の女性である可能性もワンチャンありえると思う。しかし、そうだとすれば現時点で露出している情報が少なすぎて、飲月の乱の全てが突飛なものにしかならない。

 

 

 

あの娘が今…どう過ごしているか見たいだけ…ただ、あの娘に会いたいだけだッ!!

 

分からん。

魔陰後の鏡流っぽい、としか。

これは飲月の乱には直接関係なく、ミスリードを誘うもののように見える。

 

「あの娘」とは、普通に考えれば白露なのだろうか。

つながりを示唆するものを確認できていない。

もしかして、鏡流も持明族なのだろうか? そして白露は血縁者か何かか?

彦卿と同じで髪型のせいで確かに耳の先端が見えないが……

と一瞬考えたが、ショートアニメ「飛光」で「魔陰は長命種の宿命、いずれこの身が魔陰に落ちたとき…」と言っているのでやはり長命種だろう。

 

白露は背景が不明だが、もしかすると鏡流と縁の深い存在が前世なのかもしれない。

 

……もしかして、不朽の龍の末裔ならば古海の水を使って他の種族さえも転生させたりとかできるのだろうか。特別な自分の力を分けてしまう、のような形とかで。

 

白露の前世が狐族の女性などという、全く伏線のないぶっとんだ設定があれば、この話はもっと壮大なものになりそうだ。

しかし、こう考えるとやはり狐族の女性は飲月の乱が起こる前段階で、重要な要素かもしれない。

 

 

楽しかった。

今ある材料で考えられるだけ考えた。

関連しそうな情報を拾えるだけ拾い、整合性を検証しながら慎重に繋いだが、それをやって気づいたのは恐らくミスリードさせるものが混ざっていそうである、ということである。

時系列や案件の異なる情報がひとつのフィールドにごちゃ混ぜに放り込まれていそうな印象を受けた。あと、翻訳が正しいのか疑いたくなるところもある。

そんなこんなで、冒頭でも書いたが、現時点では真理に近づくことは不可能である。余白が多い分、妄想や想像ははかどるが。楽しむのなら今のうちだ。

 

それにしても、言葉の端々からはもちろん、些細な仕草や行動等からも彼らは互いをよく知り、深く信頼している様子が垣間見えて清々しいばかりである。

鏡流と刃は鏡流景元の本物の師弟コンビよりもよほど師弟していて面白い。

彦卿に対して刃は憎まれ口叩き、鏡流は苦言をていし、間接的に景元を気にかけている。

戦闘前に全く同じ構えで入るのもいいし、舞うような回避の仕方もよく似ている。

 

丹楓は出てきたばかりで情報が少ないが、刃の言葉や景元の態度、それに「こだま」の言うことをまとめると、物静かだが熱く、義に厚い人のようだ。

大人ふたりで子どもを痛ぶるという目を覆うような戦闘が繰り広げられた際、刃は覚醒した丹恒に対して次のように言っている。

 

「まさか、ガキが相手だから、手を下せないのか?」

 

これは、突拍子もない煽りというわけではなく、丹楓ならばそれがあり得る、ということだろう。

それにしても、不完全でも丹楓が戻ってきたのを見た刃はずいぶんテンションが上がって嬉しそうであった。

刃の丹楓に対する恨みについては今の時点でもいろいろ考えられるが、その本質は「ひとりだけすべてをきれいに忘れてしまったこと」ではないかと思う。

刃が殺そうとしていたのはあくまで「丹恒」であり、「丹楓」ではない。丹恒が一度死んでくれないと丹楓が戻ってこられない。

実際、丹恒覚醒時のストーリー中で「丹恒」と「飲月」をきちんと呼び分けている様子が見られる。

つまり……たぶん、刃と景元は同じ思いだったのではないかと思われる。表現方法は真逆であったが。

 

刃、丹楓(丹恒)、景元の3人は今後も掘り下げがあるのなら、間接的な形でも共闘が見られそうな気がする。どうも、仙舟同盟は一枚岩でないふしがある。景元は明確に同盟より羅浮を重視しているのでその件で難しい舵取りが迫られそうな感じがある。神君のことがあるので、将軍から降りたり巡狩と袂を分かつことはできないだろうが。丹恒と刃が力になってくれるかもしれない。

 

個人的に気がかりなのは鏡流だ。

鏡流は彼らのつながりの証のようにも見える、刃の打った武器を手放してしまっているし、今の段階では目的が全く分からない。

彦卿に対する態度を見るかぎり大丈夫そうな気がするが……。

敵対しないことを願うばかりである。